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【胃がんの基礎知識】症状やステージ、治療法を紹介します。

 2017/01/06 がん
この記事は約 38 分で読めます。 47 Views

厚生労働省の人口動態調査によれば、2015年度の死亡原因の第1位はがんで、その数は37万人となって
いて心疾患19万9千人を大きく引きはなしています。
がんを部位別でみると、1位:肺、2位:大腸、3位:胃という状況です

がんの治療において、早期の発見、治療が大切だということは浸透してきていますが、初期症状に気づくこと
ができないというケースも多いようです。
ここでは、代表的ながんの一つである、胃がんについて説明していきます。

胃のしくみとはたらき

胃は食道に続く消化器官で、ひらがなの「し」を左右対称にしたような形で袋状になっていて、内容物の多少
や胃壁の緊張度によっていろいろな形に変化しているのです。
場所は、みぞおちの左側、左の肋骨で囲まれたあたりにあります。
(みぞおちの左半分の場所に胃の約2/3が位置します。)

食べ物が排泄されるまでの流れ
口腔

咽頭(いんとう)

食道



小腸

大腸

胃の名称
胃の入口(胃と食道の境)・・・・・噴門(ふんもん)
噴門より上方の部分・・・・・胃底部
胃の中央部分・・・・・胃体部
胃の出口(胃と十二指腸の境)・・・・・幽門(ゆうもん)前庭部、幽門
とよばれる部位で構成されています。

胃の左または外側の彎曲を大彎(だいわん)といい、胃の右または内側の彎曲を小彎(しょうわん)といいます。
また、胃の構造は内から外へ
粘膜

筋層

奨膜の3層からなります。

粘膜は多数の胃腺を形成して、胃液を分泌します。
胃には食べ物が逆流しないようにいくつかの防止機構が備わっています。
1、食物を運ぶ筋肉の運動(ぜん動運動)やそら豆のような形もそのひとつです。
2、噴門・幽門は普段は閉じていて、食物が出入りする時だけ開くことで逆流を防止する仕組みになっています。
胃のはたらき
胃のはたらきはおもに次の4つです。
胃は、食道から入ってくる食べ物を一時ためて、混ぜ合わせ、消化、吸収し十二指腸(小腸)に排出します。

食べたものを一時的にたくわえる
食べ物を十二指腸での消化の進み具合にあわせて貯蔵する働きがあります。
食後10分ごろから胃の内容物は十二指腸に送られ始め、2~3時間で80%、3~6時間ですべて十二指腸へ
おくられます

胃内容の移送は、自律神経反射とホルモンとによって調節されていて、三大栄養素の中でも糖質など
でんぷん性のものは最も早く小腸へおくられます。

炭水化物なら2~3時間、肉などのタンパク質はその2倍かかり4時間近く、脂肪は胃の運動を抑制するので
最もゆっくり通過し時間がかかります。
脂肪の多い食品を食べると、胃にもたれた感じがするのはこのせいなのです。
水分はほとんどそのまま胃から十二指腸へ流れこみます。

食べたものと胃酸をまぜあわせる
胃酸とペプシンを分泌し食べ物と胃の消化液を混ぜ合わせる。

食べたものの一部を消化
同時に胃のぜん動運動によってこなされ、吸収しやすいドロドロのかゆ状にして、小腸におくります。

食べたものを殺菌と腐敗(ふはい)をふせぐ
食べたものに混入しているバクテリアを、胃酸が殺菌します。
また、摂取したアルコールや薬物の一部は、胃の粘膜から直接、吸収されます。
食物と一緒に入り込んだ細菌を胃酸で殺菌したり、身体にとって悪い物質を嘔吐して出すはたらきもしています。
胃液には、塩酸、消化酵素、粘液が主で、塩酸はpH1.0-2.5という強い酸性です。
通常では胃酸で胃が障害されない理由は、粘液により胃の粘膜がバリアーされているからです。

ストレスが原因で自律神経のバランスがくずれると、粘液と胃酸のバランスがくずれて胃壁が消化される胃
潰瘍なってしまうことがあります。

胃がんとは…


胃がんは、胃の壁のもっとも内側にある粘膜(胃粘膜上皮)から発生する悪性腫瘍のことです。
胃がん検診などでみつけられる大きさになるまでには、何年もかかるといわれています
内側の粘膜層から粘膜下層、固有筋層、漿膜下層(しょうまくかそう)、漿膜へと外側に向かってがんが
広がり、ちかくにある大腸や膵臓(すいぞう)にも広がっていきます。
がんがこのように広がることを浸潤(しんじゅん)といいます。

がん細胞は、リンパ液や血液のながれにのって他の場所に移動しそこで増殖することもあります。
これを転移といいますが、もっとも多い胃がんの転移は「リンパ節転移」で、リンパ液のながれの関所のような「リンパ節」で増殖します

これは、早期がんでもおこることがあります。
また、進行がんの一部では、おなかの中の腹膜や肝臓にも転移がみられます。

胃がんは早期胃癌と進行胃癌にわけられますが、粘膜下層まででとどまるものを早期胃がんと呼び、リンパ節
に転移しているかどうかは関係ありません。
一方、粘膜下層をこえた場合を進行胃がんと呼びます。

また、胃がんは大きく分けて高分化型腺癌低分化型腺がんの二つの発生経路があると考えられています。

高分化型腺ははん老齢変化などで胃に出現する慢性胃炎を母体として発生すると考えられていて、正常な細胞
に似た、比較的おとなしいがんです。
一方低分化型腺癌は慢性胃炎を母体とせず、たちの悪い治りにくいがんです。

診断や治療の進歩により、胃がんは治りやすいがんの1つといわれています。
治療方針は、胃がんの大きさや広がりなどによって細かくきめられていますが、進行した状況で発見された
場合、治療が難しいこともあります。

胃がんの罹患率(りかんりつ)は40歳代後半以降に高くなります
日本全体では、胃がんにかかる人の数は高齢化のために全体数は横ばいですが、ひと昔前の同世代の人たちに
くらべると男女とも大きく減ってきています。

罹患率(りかんりつ)とは…
ある期間内(多くの場合1年)に発生した患者数をそれに対応する人口で割ったもので、疾病の発生率ということもできます。

胃がんの特徴

胃がんには特有な自覚症状もなく、早期胃がんでは無症状のことも少なくありません
そのため、健診や食欲不振や腹部膨満感、上腹部痛などの不調をきっかけに検査を受け、発見されることが多いのです。

進行胃がんの場合には、腹部にできた固い腫瘤(しゅりゅう)にふれる、下血や吐血が出るといった症状の
ほか、体重が減少することもあります。
また、転移により腹水がたまってしまうこともあるので、何らかの腹部症状が続いている場合には病院を受診
し、早期発見早期治療につながるようにしましょう。

胃がんの原因

1.食事・アルコール
アルコールは、適量であれば問題はありませんが、度がすぎた飲酒は胃に負担をかけます。
また、野菜にはがん細胞のもととなる傷ついた細胞を修復する機能があるので、野菜や果物の不足にも注意が
必要です。
塩分や香辛料の多い食べ物、熱すぎる食べ物、焦げ付いた食べ物など胃を刺激するものの取りすぎも
胃がんの原因になります。
胃は食べたものを貯蔵して次の十二指腸に少しずつ送る役割や消化する役割などがあります。
そのため、食べ物に大きく左右される可能性があります。

2.喫煙
たばこに含まれる有害物質が胃の粘膜を刺激することがよくないといわれています。

3.ストレス
ストレスで胃潰瘍や胃炎をくり返すと胃粘膜細胞が傷つき、修復が追いつかなくなることで胃がんになる
可能性が高まります。

4.ヘリコバクターピロリ菌
胃にとりついて炎症を起こす菌です。
上下水道の整備が十分でなかったころ、井戸水を飲む機会が多かった50歳以上の世代では約70%の人が
感染しているといわれています。
ただし、胃がんの危険因子とされていますが、感染している人が全員発症するとは限りません。

胃がんの初期症状

胃がんの初期症状は早期の段階ではほとんど自覚症状がないのが特徴です。
当然がんは、早期で発見できることが良いにこしたことはありませんが非常に症状がわかりにくいと、
いわれてます。
一般的な症状として、つぎのようなものがあります。
・ばくぜんと続く胃の不快感

・食欲不振

・吐き気が続く

・胸のもたれ

・黒色の便が出る

・体重が減少し始める

・貧血

・げっぷがひんぱんに出る

これらの症状は胃がん特有の症状もあるのですが、日常生活においてよくあることなのでがんをうたがわず
そのまま放置しておくというケースがほとんどなのです。
しかも、これらの症状は胃がんに限らず胃炎や胃潰瘍などのときの症状でもあります

しかしこれらの症状が出てそれが何日か続くようなら必ずなんらかの病状があると、うたがって下さい。
そして必ず病院で診察を受けるようにしましょう。
もしがんだった場合、放置しておくとがんはどんどん進行して行きます。
進行して気付いたときもし手術をした場合、胃を切除しなくてはならなくなります。

普通日常生活を送っていれば、なかなか病院に行く時間がないという人も少なくないと思います。
そこで自宅で簡単に胃がんの検査ができるのがKENSA.BIZの郵送検査キットがあります。
低価格で購入することが可能で、インターネットで検査を確認することができます。

また、胃がんになりやすい人としては、以下のような特徴があげられます。

・長期間に渡っての喫煙歴
・ストレスの多い生活
・食事に問題がある(肉中心で野菜を食べない、塩分が多い)
・中年期の男性(特に50歳を超えると、胃がんの罹患者数が増加する)
・胃に問題をかかえている(胃炎、ポリーブ、ピロリ菌感染)

胃がんの検査

胃がんがうたがわれると、胃X線検査や内視鏡検査をおこないます。
胃がんが他の臓器まで広がっているかどうかを調べる検査としては、胸部X線検査、腹部超音波(エコー)
検査、CT検査、MRI検査、PET検査、注腸検査などがあります。

血液検査

胃がんではCEACA19-9と呼ばれる腫瘍マーカーなどを検査します。
多くの腫瘍マーカーには、正常な状態や良性の腫瘍の場合にも数値が上昇すること、早期がんのうちは正常値
であることが多いこと、がんがあっても必ず数値が上昇するとは限らないことなどから、腫瘍マーカーの結果
だけ
ではがんの有無を診断することはできません
通常は、手術後の再発のチェックや薬物療法の効果判定の参考につかわれます。

胃X線検査(バリウム検査)

バリウムをのんで、胃の形や粘膜などの状態や変化をX線写真で確認する検査です。
途中で発泡剤をのんで胃をふくらませます。

手術の前に胃がんの状態を詳しく診断する方法としては、徐々に内視鏡検査が中心になってきていて、とくに
内視鏡治療を行う場合は、胃X線検査が省略されることもあります。

内視鏡検査

口または鼻からファイバースコープで胃の内部を直接見て、がんが疑われる病変の場所や、その病変の広がり
(範囲)と深さ(深達度)を調べる検査で、胃カメラ検査ともよばれます。
がんがうたがわれる場所があればその組織のごく一部を採取して、がん細胞の有無をしらべる病理検査もします。

病理検査とは…
内視鏡検査で採取した組織に、がん細胞があるのか、あるとすればどのような種類のがん細胞かなどについて
顕微鏡をつかってしらべることを病理検査といいます。

CT検査、MRI検査

CT検査は、X線を使って体の内部を輪切りのように描き出し、撮影する検査です。
別の臓器への遠隔転移やリンパ節への転移、肝臓など胃の周りの臓器への浸潤(しんじゅん)などを調べます。
浸潤(しんじゅん)とは…
発生したがん組織が 組織内部のふかくまで進行することをいいます。
がんが別の臓器や組織に移動する転移とは意味が違います。

MRI検査は、磁気を使って体の内部を描き出す検査です。
CT検査やMRI検査ではヨード造影剤を用いますので、腎臓病や喘息(ぜんそく)、アレルギーのある人は
担当医に申し出てください。

CT検査の数日前に胃X線検査などのバリウムを使った検査を受ける場合、腸の中にバリウムが残っているとCT
検査による診断をさまたげることがあります。
CT検査の前日までにバリウムが出きっていないと感じる場合には、下剤の追加が必要な場合もあるため
担当医に相談することが必要となってきます。

PET検査

放射性ブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検出するのがPET検査です。
ほかの検査で転移・再発の診断が確定できない場合に行うことがあります。

注腸検査

検査の前日に検査食を食べて腸内をきれいにして、肛門からバリウムと空気を注入し、大腸の形をX線写真で確認します。
注腸検査はもともと大腸がんの有無を調べる検査ですが、胃のすぐ近くを通っている大腸にがんが広がって
いないか、腹膜転移(ふくまくてんい)がないかなどを調べます。
注腸検査では、検査中に大腸のなかに空気が入ると、下腹部の張り感をつよく感じることがあります。

腹膜転移(ふくまくてんい)とは…
胃がんの腹膜転移とは、がん細胞が胃の外側からおなかの中にこぼれ落ちて、肝臓、腸、膀胱、卵巣などを
つつんでいる腹膜について増殖した状態です。
腹水がたまったり、腸の動きがわるくなったり、腸が狭くなってしまうこともあります。

胃がんの病期(ステージ)

治療方針を決めるためには、胃がんのステージを把握することが必要になります。
病期とは、「ステージ」や「進行度」ともいい、がんの進み具合を表したものです

当然ながら、がんがあまり進行していない早期の段階のステージであれば、それだけ治る確率も高くなります。

胃がんのステージは、
がんが胃の壁のなかにどのくらい深くもぐっているのか(深達度:しんたつど)
リンパ節や他の臓器に転移があるかどうか
の2つの観点から決められます。

胃壁の構造

深達度をしるためには、胃壁の構造をしる必要があるので紹介します。

粘膜層(ねんまくそう)…がんが初期の段階にここにできます。

粘膜下層(ねんまくかそう)

筋層(きんそう)

漿膜下層(しょうまくかそう)

漿膜(しょうまく)

臓器があります。

がんの深さ(深達度)

T1~T4に分けられています。Tとは、tumor(腫瘍)からきています。
T1:胃がんが粘膜層、粘膜下層までにとどまっている。

T2:胃がんが筋層筋層にはいりこんでいる。あるいは浸潤(しんじゅん)している。
浸潤とは…
発生したがん組織が 組織内部の深くまで進行すること をいいます。 がんが別の臓器や組織に移動する転移
とは意味が違います。

T3:がんが筋層をこえて漿膜下組織に浸潤している。

T4a:がんが胃の表面まで出ている。

T4b:がんが胃の表面にでたうえに、ほかの臓器にもがんがひろがっている。

なお、胃がんが、肝臓や肺などの離れた臓器に転移(遠隔転移)してしまっている場合には、進行度に
かかわりなくステージはもっとも重いⅣと判断されています。

リンパ節転移の状況

胃の周囲には、胃に近いほうから、第1群、第2群、第3群という具合にリンパ節が取り巻いています。
リンパ節転移の状況は、N0~N3に分けられます。Nとは、lymph node(リンパ節)からきています。

N0:リンパ節転移が認められない
N1:胃に接しているリンパ節に転移がある
N2:胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節に転移がある
N3:遠くのリンパ節に転移がある

病期(ステージ)分類

がんの深さ(深達度)、リンパ節転移の状況の2つの観点の組み合わせによって、胃がんのステージはⅠ~Ⅳ
に分けられています。
(リンパ節への転移の有無によって、A、Bとも分けられています)

また、がんの深さが粘膜下層までのものを「早期胃がん」、深さが粘膜下層をこえて固有筋層より深く及ぶ
ものを「進行胃がん」といいます。

がんが胃の壁の内側から外側にむかって深く進むにしたがって、転移することが多くなります。
治療前の検査によって病期(ステージ)分類が評価され、治療方針がきまりますが、手術のときにおなかの中
を直接みて転移などがはじめてみつかることもあります。

ⅠA期
リンパ節転移がなく、粘膜下層までにとどまっている。

ⅠB期
以下のいずれか。
・リンパ節に転移がないが、筋層または漿膜下層まで浸潤している。
・胃に接したリンパ節に転移があるが、粘膜下層までの浸潤。

Ⅱ期
以下のいずれか。
・リンパ節転移はないが、漿膜を越えて胃の表面まで浸潤している。
・胃に接したリンパ節に転移があるが、筋層または漿膜下層までの浸潤。
・胃に流れ込む血管にそったリンパ節に転移があるが、粘膜下層までの浸潤。

ⅢA期
以下のいずれか。
・リンパ節転移はないが、胃の表面に出て、他臓器(結腸や膵臓)まで浸潤している。
・胃に接したリンパ節に転移があり、漿膜を越えて胃の表面まで浸潤している。
・胃に流れ込む血管にそったリンパ節に転移があるが、胃の表面に出ずに、筋層または漿膜下層までの浸潤。

ⅢB期
以下のいずれか。
・胃に接したリンパ節に転移があり、胃の表面に出て、他臓器(結腸や膵臓)まで浸潤している。
・胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節に転移があり、漿膜を越えて胃の表面まで浸潤している。

Ⅳ期
さらに遠くのリンパ節に転移があるか、肝臓、肺、腹膜などに遠隔転移が認められる。

胃がんの生存率

胃がんは1997年まではがんによる死因の第1位でしたが、1998年以降は肺がんが第1位になり、胃がんは
大腸がんに次いで第3位となっています。

2012年の統計によると罹患者数(かかる人)は胃がんが毎年約13万人をこえるのに対し、肺がんは毎年約11万人です。
胃がんにかかる人は肺がんにかかる人の同程度いるのに、死亡原因としては肺がんよりも少ないのです。
(2015年国立がん研究センターがん対策情報センターによる)

死亡者数でいうと、肺がんの死亡者数は年間約7万人で、胃がんの死亡者数は年間約5万人となっています。
つまり、胃がんになったとしても治る人が多いということがわかります。

胃がんは医療技術の進歩により、進行がんでも治すことができるようになってきていますし、治療成績も年々
向上しています。
がんが粘膜下層までに留まっている早期がんであれば、手術のみでほぼ100%治すことができるようになっています。
また、がんが固有筋層を越えた進行がんの場合でも、比較的早期の段階では、早期がんと同程度の治療成績と
なっています。

<胃がんの実測生存率と相対生存率>

実測生存率 相対生存率
Ⅰ期 86.7% 97.2%
Ⅱ期 58.9% 66.0%
Ⅲ期 42.0% 47.2%
Ⅳ期 6.5% 7.2%

※ 5年実測生存率…がんの治療を始めた人の中で5年後に生存している人の割合
※ 5年相対生存率… がんの人とがんではない性別と年齢が同じ人の5年後の生存率をくらべた割合

胃がんの5年生存率は、全がん(全種類のがん)の平均と同じくらいの数値ですので、平均程度の予後
(今後の見通し)のがんであるということがいえます。
ステージI・Ⅱ・Ⅲでは5年生存率は平均程度ですが、ステージⅣでは急激に下がり、状況がきびしくなると
いう
特徴があります

胃がんができた場所が胃の下部付近であれば、下部だけを切除して胃の一部(上部)を残すことが可能なの
ですが、胃の上部にがんができた場合は、一般的に胃の全摘手術になります。

胃の上部にできたがんは悪性度が高いことが多く、5年生存率は下部にできたがんと比べ、かなり低くなります。
また、胃にできたがんが「スキルス胃がん」の場合は、表面上はほとんど変化がないのに、粘浸潤して膜内を
深くいて転移しやすいので、発見された時にはすでに手術ができない状態であるケースが多いです
スキルス胃がんの場合の5年生存率は、手術ができた場合でも約20%程度です。

胃がんの治療

胃がんの治療は、病期(ステージ)にもとづいてきまります。

【ⅠA期】
・がんが胃の粘膜に限局している場合
①内視鏡治療をおこなって経過観察をします。
②内視鏡治療をおこなって無理なら手術をおこないます。

↓手術後

病理検査・病理診断による検討がされ、その後3つの方法のどれかを選択します。
1.経過観察をします。
2.補助化学療法をおこないます。
3.化学療法と対症療法をおこないます。

【ⅠA期でがんが胃の粘膜下層に達している場合、ⅠB期・Ⅱ期・Ⅲ期】
手術をおこないます。

↓手術後

病理検査・病理診断による検討がされ、その後3つの方法のどれかを選択します。
1.経過観察をします。
2.補助化学療法をおこないます。
3.化学療法と対症療法をおこないます。

【Ⅳ期】
化学療法、放射線治療、緩和手術、痛みにたいしての対症療法をおこないます。

手術(外科治療)


噴門の場所… 胃の上部は食道とつながっている部分です。
幽門の場所…胃の下部で十二指腸(小腸)につながる胃の部分で、もっとも胃がんのできやすい場所
いわれています。

胃がんでは、手術がもっとも有効で標準的な治療です。
胃の切除と同時に、決まった範囲のまわりのリンパ節をとりのぞきます。(リンパ節郭清:りんぱせつかくせい)

胃の切除の範囲は、がんのある場所や、病期の両面から決定します。
また、胃の切除範囲などに応じて、食べ物の通り道を作り直す、消化管再建がおこなわれます。
リンパ節に転移している可能性がほとんどない場合には、手術ではなく、内視鏡による切除(内視鏡治療)
がおこなわれることもあります。

胃がんの外科療法は大きくわけてつぎの3種類あります。
・胃をすべて切除する「胃全摘術
・胃の下部(幽門部)を切除する「幽門側切除術
・胃の上部(噴門側)を切除する「噴門側切除術
どの外科療法を行うかはがんのできた部位によってことなります。

胃全摘術

がんが胃の上部(噴門側)にできて進行している場合や胃の下部にできたがんが上部にまで広がって場合は、胃
をすべて摘出する胃全摘術がおこなわれます。
胃を全部摘出した後は、食道と十二指腸を直接つなげる再建法(ルーワイ法)がとられます。

幽門側切除術

胃の下部(幽門側)にがんができた場合は、胃の下部(胃全体の3分の2程度)を切除する幽門側切除術がおこなわれます。
胃がんは胃の中部~下部にかけてできることが多く、胃がん全体の8割を占めますので、胃がん手術の約70%
はこの手術法がとられます

がんの広がり方により、胃の中部~下部と、周辺の脂肪組織、リンパ節を同時に切除します。
再発を防ぐためにがんのできた周辺組織も同時に切除します。

噴門側切除術

胃の上部(噴門側)にがんができた場合は、胃の上部(胃全体の3分の1程度)だけを切除する噴門側切除術が おこなわれます。
しかし胃の上部を切除し胃の下部だけを残すと、胃酸が食道に逆流し逆流性食道炎になってしまうので、
がんが胃の上部にできた場合は胃を全摘する場合が多く、この手術法はあまりとられません。

胃を切除したとしても、胃の周りの臓器(大腸・肝臓・膵臓・十二指腸など)にまでがんが広がっている場合
は、胃とともに周りの臓器も切除する拡大手術が行われます。
逆にリンパ節に転移をしておらず早期がんの場合には、できるだけ胃やリンパ節を切除する範囲を少なくして
胃の機能を温存する縮小手術が行われます。

術後の後遺症

胃の手術後はどうしても一度に食べられる食事量が減るため、栄養状態が悪化したり、食べ物がすぐに小腸に
ながれていくことで、食事後に気分が悪くなったりすること(ダンピング症候群といいます)があります。
また、胃をすべて取るととくに食事量が減りますので、残った胃が小さくなっても、出来るだけ胃を残す
工夫がされてきています。

腹腔(ふくくう)鏡下胃切除

腹腔鏡手術は、腹部に小さい穴を数か所あけて、専用のカメラや器具で手術をおこなう方法です。
通常の開腹手術にくらべて、手術による体への負担がすくなく、手術後の快復が早いことがメリットです

胃がんに対する腹腔鏡手術は、1991年に世界に先駆けて日本で開発されました。
年ごとにその手術件数は増加し、内視鏡外科学会の調査では2007年には年間5000例近い胃切除術が国内で
おこなわれるようになり、現在も増加しています。
腹腔鏡下胃切除術が日本で開発されてから、約26年がたちますが、従来からの数十年にわたる開腹手術と
くらべて治療成績の比較がまだ充分でないために、胃がん治療ガイドライン(第4版)においては、『有望と
される研究的治療』と位置づけられています。

デメリットとしては、つぎのようなことがあります。
・開腹手術にくらべて、リンパ節郭清(かくせい)がむずかしい
・消化管をつなぎなおす技術の確立が十分とはいえない
・通常の手術にくらべて合併症の発生率がやや高くなる可能性もある

腹腔(ふくくう)鏡下胃切除は、がんがどれくらい治るかについての長期成績がまだ出ていないのが現状で、
この方法を検討する場合には、担当医とよく相談することが必要となってきます。

対象となる病状

おもに早期胃がんに対してが、腹腔鏡下手術をおこなっています
内視鏡(いわゆる胃カメラ)では切除しきれない、つまり胃がんが粘膜下層まで深く入り込んでいて、胃の
近くにあるリンパ節をとる必要があると判断される早期胃がんに対して腹腔鏡下手術おこないます。

早期胃がんは、ほとんどが病期Iに含まれ、治る可能性が非常に高いことがわかっています。
そして、同じように治ることが期待できるのならば、できるだけ身体に負担がかからず、かつ術後の回復が
速い方法がよい、という考えから腹腔鏡下手術はおこなわれています

実際の腹腔鏡手術は、開腹手術と同じ全身麻酔下で行います。
まず腹腔内(腹腔:お腹の壁と臓器との間の空間のことです)に炭酸ガスを入れて膨らませ、おへそからこの
手術用に開発されたほそい高性能カメラ(腹腔鏡)を挿入します。
このとき、同時に手術操作に用いる器具を挿入するために、5~10ミリの小さなあなを左右に合計4-5ケ所
にあけます。

そして腹腔鏡で撮ったお腹のなかの様子をモニターに映し出して、胃切除や周囲のリンパ節の切除を行います。

この手術は、専用の高性能カメラからの拡大した鮮明な画像を見ながらおこなうため、従来の開腹手術では
見えにくかった細かい血管や神経まで見えて繊細な手術操作が可能です
胃がんを確実に治すために切除すべき胃やリンパ節の範囲は、その方の胃がんの進行度(病期)によって
決まるため臓器の切除範囲は腹腔鏡下手術でも開腹手術でもかわりません。

腹腔鏡下胃切除手術と開腹手術の違い

開腹手術では20cmほどおなかを切開(開腹)して、直接手で臓器を触れながら手術を行うのに対して、
腹腔鏡手術では、5~10mm程度の傷から、お腹の中に器具をいれて、カメラを見ながら手術します。

胃がんを確実に治すために切除するべき胃やリンパ節の範囲は、患者さんの胃がんの進行度(病期)によって
決まるため、臓器の切除範囲は腹腔鏡下手術でも開腹手術でも変わりません。
違いは、胃やリンパ節への到達経路(方法)と傷の大きさです

腹腔鏡手術では傷が小さくてすむことや、術後の痛みが少ないこと、お腹の中のほかの臓器たとえば腸管など
に与える影響が少ないために術後の消化管の回復が速いと言われています
早くから食事が摂れること、入院期間が短くて早く社会復帰ができることなどが利点です。

腹腔鏡手術の対象となる早期胃がんは治る可能性が高く、手術後の消化管機能をいかに保ち、術後の障害を
どう予防するが重要となってきます。

内視鏡治療

内視鏡をつかった胃がんの治療は、手術のように開腹しないため、身体への負担が少なく、回復が早いのが
利点です
適応となるのは原則、リンパ節転移の可能性がきわめて低く、がんが一度に切除できる大きさと部位にある
場合ですが、リンパ節に転移している可能性があっても、患者さんの体力が手術に耐えられない場合には、
内視鏡による治療がおこなわれることがあります

内視鏡を使った治療は、おもにの2種類の方法があります。

① 内視鏡的粘膜切除術(ないしきょうてきねんまくせつじょじゅつ):EMR
内視鏡で映し出された画像をモニターで確認しながら、胃の粘膜上にあるがんをもち上げて、輪状のワイヤー
(スネア)で焼き切る方法です。
胃がんの広がりが浅く小さい場合には、内視鏡だけでがんを取り除くことができます。
ただし、いくら浅くて小さくてもリンパ節などに転移している場合には、手術が必要となります

② 内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ):ESD
内視鏡で映し出された画像をモニターで確認しながら、高周波ナイフを使って病巣(びょうそう)周囲の粘膜
を切開し、さらに粘膜下層をはがしてがんを切除する方法です。
これによりEMRで一括切除が難しかった2cm以上のがんや、がんの内部に潰瘍をともなう病変も治療可能になりました。
現在、ESDは多くの施設で日常的に行われていますが、長期予後(見通し)に関する十分な証拠がまだ
とぼしいため、現在、臨床試験が行われています。

これらの治療後には、内視鏡による切除が十分かどうかを病理検査で確認します。
不十分な場合は胃を切除する手術が追加で必要になります。

化学療法

胃癌に対する化学療法(抗がん剤治療)の目的は大きく2つに分かれます。
1つ目は補助療法として行う化学療法です。
補助療法とは、手術前や手術中、あるいは手術後に手術療法の効果を高めるためにおこなう補助的な治療の
こと をいいます
胃がんに対する補助化学療法(抗がん剤治療)は進行がんの術後に目に見えないちいさながん細胞を標的
として、再発を予防する目的で術後補助化学療法をおこないます。

胃がんの手術では目で見える範囲のがんとその周囲のリンパ節などを切除しますが、目に見えない細胞レベル
でのがんは残ってしまう可能性があります。
微小ながん細胞が取りきれずに残ることは手術後に再発・転移する可能性があるということです
術後に補助化学療法を行う目的は、細胞レベルで残っている可能性のある小さながん細胞をやっつけて再発を
抑えていくためです。

胃がんに対して抗がん剤治療を行う2つ目の目的は、手術でがんを取りきることができない進行がんや再発・
転移したがんに対して生存期間の延長QOL(生活の質)の改善をめざす治療になります。

術後補助化学療法(根治術後におこなう抗がん剤治療)

術後補助化学療法は全員に行うものではありません
抗がん剤治療には副作用が伴います
手術後に再発する可能性が低い患者さんが手術後に抗がん剤治療をおこなったとすると、抗がん剤治療により
得られるメリット(再発・転移の可能性が低くなる)よりもデメリット(副作用により苦しむ、場合に
よっては死に至る)の方が大きくなってしまう可能性もあります。

そのため一般的に術後補助化学療法を行うのはステージ2(T1を除く)またはステージ3の患者さんが
対象とされています。
ただし、体力が十分ではない患者さんは抗がん剤治療をやることで、重大な副作用を引きおこすリスクが高く
なるため条件が整うまで抗がん剤治療ははじめません。

※高齢者や肝臓、肺、心臓、骨髄機能が抗がん剤にたえられない場合は治療を行わないと判断されることがあります。

術後補助化学療法で使用される抗がん剤と治療期間

胃がんの根治切除後にティーエスワン(TS-1カプセル)という抗がん剤を1年間内服することにより生存率が
改善することがわかりました
抗がん剤治療を安全にうおこなうことができると判断されてから治療は始ります。
通常は4週連続して内服し、2週間休薬するのが1コース(1クール)になり、1年間継続します。
術後の補助化学療法は規定の期間が終了した時点で治療を終了し、その後は経過観察とします。

術前補助化学療法(手術前に行う抗がん剤治療)

予後の悪いタイプの胃がんに対して手術前の体力があるうちに抗がん剤治療をおこなって、微小な転移に
対してより早い段階で治療をおこなうために術前化学療法をおこなうことがあります。

術前化学療法が適応となる胃がんとしてつぎのようなものがあります。
・びまん浸潤型(4型胃がんスキルス胃がん
・8cm以上の大きさで潰瘍浸潤(かいようしんじゅん)型(3型)の胃がん
第3群リンパ節転移している胃がん
第2群リンパ節に大きな塊状となって転移が認められる胃がん

胃がん治療に用いられる主な抗がん剤と副作用

<代表的な抗がん剤>
胃がんに対する化学療法は
・フルオロウラシル(5-FU)
・イリノテカン(略称:CPT-11 商品名:カンプト、トポテシン)
・シスプラチン(略称:CDDP 商品名:ランダ、ブリプラチン)
・タキサン系薬剤のパクリタキセル(略称:PTX 商品名:タキソール)
・ドセタキセル(略称:TXT 商品名:タキソテール)
・テガフール・キメラシル・オテラシルカリウム配合(略称:S-1 商品名:ティーエスワン)
これらが、生存期間を延ばすことができると考えられています

これらの抗がん剤を組み合わせて抗がん剤治療は行われます。
2011年2月にカペシタビン(商品名:ゼローダ)が治癒切除不能な進行・再発の胃がんに適応となりました。
2011年3月に分子標的薬のトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)がHER2過剰発現が確認された治癒切除
不能な進行・再発の胃がんに適応となりました。

TS-1
術後の再発防止で推奨されている抗癌剤がTS-1です。生存期間の延長が見られました

TS-1+シスプラチン
切除不能の進行胃がん・再発胃がんに対して、もっとも推奨されているレジメン(抗がん剤の組み合わせ)が
TS-1+シスプラチンです。
腫瘍を縮小させる効果が高く、生存期間の延長もみられました。

ただしTS-1はカプセル剤なので、飲み薬が飲めない場合は使えません。
シスプラチンは腎臓への負担が大きいため、高齢などで腎機能が低下している場合は慎重な検討が必要です。

化学療法の副作用は人によって程度に差があるため、効果と副作用をよくみながらおこないます。
また、化学療法は臨床試験に参加して治療をおこなう選択肢もあります。

化学療法(抗がん剤)の副作用

抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響をおよぼします。
とくに髪の毛、口や消化管などの粘膜、あるいは、骨髄など新陳代謝のさかんな細胞が影響をうけやすく、
その結果として、つぎのようなこともあります。

白血球減少(好中球減少)、赤血球減少血小板減少
胃癌の抗がん剤治療により血液をつくる細胞がダメージを受け、白血球減少や赤血球減少、血小板減少などの
副作用を高頻度でおこります。
胃がんに対する化学療法では、患者さんが抗がん剤の副作用により死亡することが約2%程度起こると報告
されています

治療に関連した死で最も多いのは白血球や好中球減少による重篤な肺炎や敗血症などの感染によるもの
ですので、これらの血液検査の数値が低下した場合には注意が必要です。
白血球減少(好中球減少)が起きると肺炎などの感染症を起こしやすくなります。
また発熱が続くこともあります。
白血球や好中球の減少に対しては、G-CFS(顆粒球コロニー刺激因子)などを使用することがあります。

赤血球が減少することで貧血になったり、血小板減少により出血しやすくなったり、あざができやすく、
なったり注射の跡が消えにくくなるなどの副作用があらわれることがあります。
これらの副作用を骨髄毒性(こつずいどくせい)といいます。
骨髄毒性は目に見える副作用ではないためかるく考えがちですが、実は命にかかわることが少なくない副作用
ですから抗がん剤の投与中は注意して骨髄毒性が許容範囲内であるかをチェックする必要があります。

吐き気嘔吐悪心下痢便秘食欲不振
胃がん治療で抗がん剤が投与されると多くの人で吐き気や嘔吐をおこします。
下痢や便秘をする人もいます。
使用する抗がん剤の種類により吐き気や嘔吐が起きやすい抗がん剤もあれば、あまり激しい副作用をともなわ
ないこともあります。
また、場合によっては極度の脱水症状により衰弱(すいじゃく)してしまう可能性もあります。

脱毛
胃がん治療で使用する抗がん剤によっては脱毛をおこすこともあります。
治療が終われば髪の毛は再び生えてきます。

・その他の副作用
胃がん治療で使用される抗がん剤の副作用として、動悸や息切れ体のむくみ筋肉や関節の痛みなどが
あらわれることがあります。
手足症候群といって手のひらや足の裏に刺すような痛みがあったり、手足の感覚がまひしたり、皮膚の乾燥や、
かゆみ変色などの症状があらわれることもあります。

口内炎倦怠感(だるさ)、皮膚や爪の変色味覚障害肝機能障害腎機能障害なども副作用であらわれることがあります。

治療効果が十分で、副作用が軽くてすめば治療を続けるメリットは大きいと思います。
一方で治療効果がなく、副作用が強く苦しみが増しているのであれば治療を続けることが患者さんにとって
大きな負担となり、時に死期を早めてしまうリスクもあります。
抗がん剤治療を行う際には治療効果が得られているのか冷静に判断をすべきです。

Ⅳ期の胃がんに対する治療

Ⅳ期の胃がんは、遠隔転移があり、がんをすべて取り除くことを目標とする手術はむずかしいと考えられる
ため、化学療法(抗がん剤治療)が中心となります

しかし、病状によっては、遠隔転移があっても、胃がんだけを切除する手術(減量手術)をおこなったり、
がんからの出血や消化管などがせまくなるために食事が十分にとれないときは、病変がある胃を切除したり、
食物の通り道をつくるバイパス手術がおこなわれることもあります。

胃がんとピロリ菌の関係

ピロリ菌とは、「へリコバクター・ピロリ」という細菌で、ヒトなどの胃の粘膜に付着して生息しています。
胃の内部では胃酸が作られていて、強い酸性に保たれています。
ですから通常は、生物が生きていけない環境のはずなのですが、ピロリ菌がもっている酵素は胃酸を中和
させ、強い酸性の中でも生存できる環境を作りあげているのです。

日本は、胃がん患者数が先進国の中でも多いとされていて、死亡者数も年間約5万人にのぼりますが、その
なかで、胃がん患者のおよそ98%がピロリ菌の保菌者だった、という報告もあります。

このように、ピロリ菌への感染は、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍のほかにも、胃がんを発症する原因に
なるとも言われています。

そこで、定期健診などのピロリ菌の検査で陽性になった場合、胃酸を抑える薬と抗生物質の服用によって、
除菌がおこなわれます。
一度で除菌できなかった場合は、ちがう種類の抗生物質を服用して、再度除菌をおこなっています。

ピロリ菌とヨーグルト

現在、販売されているヨーグルトは乳酸菌の種類も豊富ですし、期待される効果もさまざまです。
近年の研究によると、新しい乳酸菌として「腸への作用だけではなく胃で生き残る力が強い」とされるものがあります。
その一つに「ラクトバチルスガッセリー」と呼ばれる乳酸菌があります。

この乳酸菌は、胃酸への抵抗性が高く、他の乳酸菌に比べて胃内にとどまる時間が長いという特徴がある
ことから、ピロリ菌の除菌を助ける働きが期待されています。

研究では、ピロリ菌保菌者31名が1日2回、8週間にわたってラクトバチルスガッセリーの入ったヨーグルトを
摂取したところ、摂取前に比べ、ピロリ菌の数が平均して約10分の1に抑制されたということです。

このような乳酸菌を上手に胃や腸の健康管理に取り入れてみるのも、ひとつの方法かもしれません。
ただし、研究結果では、この乳酸菌がピロリ菌を抑制する期間は約4~8週間でしたので、飲み続けていない
と、ふたたび増殖することも指摘されています。

たとえ効果が期待できるからといって、ヨーグルトの摂り過ぎは動物性脂肪の摂り過ぎにつながります。
ちなみに、厚生労働省の示している「食事バランスガイド」では、1日の乳製品の目安は、ヨーグルトでいう
1日2カップ(約160g)が目安となります

ピロリ菌を気にされている方、除菌されている方、胃の調子を整えたい方は、この機会に限度をまもって日常
生活の中にとりいれてみてはいかがでしょう。

ピロリ菌による症状

ピロリ菌に感染することで、ピロリ菌がつくる酵素「ウレアーゼ」と胃の中の尿素が反応して、アンモニア
などを発生し、胃の粘膜に傷をつけます。
すると身体は、胃を守ろうとし、免疫反応として胃の粘膜に炎症をおこしてしまうのです。

ピロリ菌がいると、胃の症状として、下記のようなものが出てきます。

胸やけ・嘔気・おう吐
感染により、胃の粘膜が弱って、繰り返し炎症がおこり、治りにくくなります。
胃の機能が落ちると、吐き気や胸やけ、げっぷ、胃痛などの症状がでてきて、そのままにしておくと胃潰瘍
へと悪化します。

胃もたれ
慢性胃炎になるとよく出る症状ですが、ピロリ菌により繰り返し胃の炎症がおこることで、胃もたれや胃痛が
ひんぱんにおこることになり、症状が進むと胃潰瘍になります。

食欲不振
慢性胃炎になってくると食欲不振になります。お腹に不快感が出たり、膨満感が出たりします。

空腹時胃痛
空腹時に胃が痛むことがあります。
とくに夜間におこり、お腹の上部の痛みも一緒にでることがあります。
そのままにしておくと十二指腸潰瘍を引きおこすことがあります。

食後の胃痛
胃の中に食べ物が入ってくると、その食べ物で胃の炎症、ひどくなると潰瘍を刺激して、食事中や食後に
痛みが出てくることがあり、胃潰瘍になります。同時に胃もたれ・胸やけがおこったりもします。

ピロリ菌の症状として現れる疾患とは?

慢性胃炎
長期間にわたって慢性胃炎が続くと、胃酸・胃液などを分泌している組織がへって胃の粘膜がうすくなり萎縮
(いしゅく)します。
この状態が進むと、胃液の分泌が不十分になって、萎縮性胃炎(=食べ物が消化されにくくなる)となり、
食欲不振や胃もたれを感じます。

その他の症状としても、空腹時や夜になると胸やけがしたり、胸が痛くなったり、またお腹の膨満感がでた
り、げっぷが出たりするなどの自覚症状があります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃全体にわたってピロリ菌が感染している場合には胃潰瘍になり、胃の出口あたりに感染があれば、十二指腸
潰瘍になりやすいい、という報告があります。
胃潰瘍では、食後30分から1時間ほどして上腹部痛がおきます
また、吐き気や胸やけがあらわれます。
十二指腸潰瘍の症状は、空腹時の痛みです。胃酸が多くなる夜間や朝方にみぞおちあたりに痛みを感じます。

胃がん
胃がん独特の症状があるわけではありません。
早期胃がんの多くは無症状で、腹部膨満感とか食欲不振などで、検査をしてみて発見されることが多いのです。
進行がんでは、体重減少、消化管からの出血として、吐血や下血がみられます。
腹水が溜まったり、リンパ節がふれるような場合は、がんが全身に広がっていることを意味します。

ピロリ菌の除菌

薬を使って除菌します。
きちんと間違いなく服薬すれば、確率はおよそ75%です。除菌療法を行う前、そして行った後に、「元」と
なっている疾患を治療していきます。

すべての人が1回で除菌に成功するわけではありません。
成功していなければ、再度挑戦します。
きちんと服薬したときの成功率は85%を超えていて、1回目・2回目をあわせた場合では、95%を超えます。

ピロリ菌の除菌をしたときの副作用

下痢・軟便
下痢は、抗菌薬によって腸管刺激作用、腸内細菌のバランスの変化が原因と考えられます。
便が柔らかくなる程度ならば、心配ないですし、下痢が続くこともあるかもしれません。
もし血便が出たらすぐ受診しましょう。

味覚異常
食べ物の味がわからない、味がおかしい、金属のような味を感じるなどの味覚異常の出る人がいますが、
これらは、2~3日でおさまります。

アレルギー症状
皮膚にかゆみや発疹などアレルギー症状が出る場合もあります。

<こんなときは注意が必要>
発熱や腹痛、血便などが出た場合は、すぐに服用を中止して、担当医に相談して下さい。
しかし、軽い症状である軟便や下痢、味覚異常などの場合は、自分の判断で勝手に服薬の中止などはせず、
最後まで飲み終わったほうがいいでしょう。症状がひどくなった場合は、すぐに担当医に相談しましょう。

特殊な胃がん「スキルス胃がん」

特殊ないがんとして、胃壁のなかでひろがって粘膜の表面にあらわれない「スキルス胃がん」があります。
早期の段階で発見が難しいため、進行した状態で発見されることが多く、治療が難しいがんの種類の1つです
スキルス胃がんは分化型腺がんではなく未分化型腺がんであり、胃の固有粘膜から発生するため、胃の粘膜下
でがんが広がるために自覚症状もあまりなく、静かに進行していくことが多い悪性度の高いがんになります。
また、転移を起こしやすく、手術切除が難しくなることも多いです

スキルス胃がんは、比較的30~40代の若い女性に多いといわれています。
進行が速いのにもかかわらず、初期の場合には、病変が胃の一部に限られていると、粘膜の変化があまり
なく、内視鏡による生検検査で偽陰性(実際には存在するはずの癌を見落とすこと)になることがあります。

初期症状

スキルス胃がんは、進行が早いため症状がどんどん増えていきます
スキルス胃がん になると、まず胃の動きが悪くなるため、胸やけや消化不良、食欲不振などの症状から始ま
り、つぎに胃に鈍い痛みを感じはじめます。
特に食事の前に痛みを感じやすく食後に痛みが消失するといった感じです。
この痛みを感じ始めた頃には、胃に硬い感じや重い感じがします。

末期症状

末期症状になると、がんも進行するためあきらかな症状が出現します。
吐き気や、嘔吐、吐血や下血などの症状です。
スキルス胃ガンによる下血では、鮮やかな血ではなく、黒い血の便です。

生存率は?

スキルス胃がんは、予後が悪い疾患の1つです。
転移しやすく再発率が高いため、5年生存率は15~20%といわれていて、治療を行っていても予断を許す
ことのできない疾患です。

治療法

スキルス胃がんの主な治療方法は、手術抗がん剤、放射線療法になっています。
スキルス胃がんの場合、進行が早いため手術だけではがん細胞が取りきれないことが多いため、抗がん剤や
放射線療法などの方法とあわせて治療するのが一般的です。

原因

スキルス胃がんは、遺伝性が強いと言われています
そのため、親や祖父母、兄弟などがスキルス胃がんになっている場合は、スキルス胃がんになるリスクが高いです。

スキルス胃がんの予防方法

どうすれば予防することができるのか?
1つめは、生活習慣を見直すことです。胃がんの原因には喫煙や飲酒、食事の習慣などが挙げられます。
そのため禁煙や適度な飲酒、バランスのとれた食生活を送ることが大切です

また「ヘリコバクターピロリ菌」も胃がんの原因の1つです。
ふつうの胃がんに比べてスキルス胃がんになる関連性はあまりないとされています。
ですが、胃がんの予防としてヘリコバクターバクターピロリ菌に感染していないか検査し、感染してる場合
には除菌をおススメします。

また、スキルス胃がんには、遺伝性がある疾患です。
そのため、血縁者にスキルス胃がんのある方は定期的な検診を行うことお勧めします

スキルス胃がんの検査

検査としては、以下のことをおこないます。

・内視鏡検査(胃カメラ)
・造影検査(バリウムを飲みます)
・エコー
・CT
・MRI
・レントゲン
・採血

これらの検査を行ったからといって、必ず早期発見できるというわけではありません。
また、スキルス胃がんは進行が早いため、半年で末期がんになってしまう可能性があります
ですので、1年前に検査したから安心!と思うのではなく、異常や不快を感じたら検査を受けることをお勧めします。

胃がんの経過観察

治療をおこなった後の体調管理のため、また再発をうたがわせる症状がないかどうか調べるために定期的に
通院が必要です。
治療後の通院予定は、胃がんの性質や進行度、治療内容と効果、追加治療の有無、体調の回復や後遺症の程度
などによって、受診と検査の間隔がきまります。

胃全摘の手術をうけた場合は、胃液にふくまれる成分がなくなるためにビタミンB12が小腸で吸収できなくなります
ビタミンB12が過度に不足すると悪性貧血になるため、注意が必要です。
これは内服薬では補えないので、ビタミンB12の注射をうける必要があります

転 移

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液のながれにのって別の臓器に移動し、そこで成長したものをいいます。
もっとも多い胃がんの転移はリンパ節転移で、早期がんでもおこることがあります
リンパ節転移は、手術でひろい範囲のリンパ節を完全に取り除いてなおる可能性のある転移です。
つぎに多いのは腹膜転移と肝転移で、進行したがんの一部にみられます。
これらの転移は治療がむずかしいという問題点があります。
また、がんを手術で全部切除できたようにみえても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に移動している
可能性があり、手術した時点ではみつけられなくても、時間がたってから転移としてみつかることがあります。

再 発

再発とは、初回の手術で目でみえる範囲の胃がんをすべて取り除いた後や、化学療法をおえた後、時間が
経過して、治療をしたところにがんが出現したり、別の臓器や胃から遠くはなれたリンパ節に転移が発見
されることをいいます。

再発といってもそれぞれの患者さんでの状態はことなりますが、化学療法による治療をおこなうことが一般的です
それぞれの患者さんの状況におうじて治療やその後のケアを決めていきます。

最後に…
もしも、胃がんという診断をうけたら、まずは病状をくわしく把握しましょう。
自分の体を一番よくしっているのは担当医です。
わからないことは、なんでも質問することが大切です。

また、診断をきくときは、病期(ステージ)を確認しましょう。
治療法は、病期によってことなりますので、医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、自分にあった
治療法であることを確認しましょう。
そして、診断や治療法を十分に納得した上で、治療をはじめましょう。

また、担当医以外の医師の意見を聞くこともできます。
これを「セカンドオピニオン」といいます。
セカンドオピニオンでは、
①診断の確認
②治療方針の確認
③そのほかの治療方法の確認とその根拠
を聞くことができます。
もし、聞いてみたいとおもったら、「セカンドオピニオンを聞きたいので、紹介状とデータをお願いします」
と担当医に伝えましょう。

担当医との関係が悪くならないかと心配になるかもしれませんが、多くの医師はセカンドオピニオンを
聞くことは一般的なことと理解していますので、こころよく資料をつくってくれるはずです。

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ライター紹介 ライター一覧

hamamoto

医学の大好きなHAMAMOTOです。
病気や健康について、皆さまに分かりやすく紹介していきたいと頑張っています!(^^)!
現在、鍼灸治療院を経営し、皆さまの健康にたずさわっています。
平成13年に整体師として治療院をしつつ、平成16年にアロマコーディネーターの
資格を取得しました。
鍼灸治療院を開業したのは、2016年5月ではございますが、患者さまの治療と
皆さまへの健康にかんする情報発信に頑張っていきたいと思っています!
鍼師免許 第171865号
灸師免許 第171571号
ウェブサイトURL:http://health-life.tokyo/
メールアドレス:koume3086@gmail.com

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