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脳腫瘍の種類や症状・治療法を紹介しています。

 2016/12/13 がん 脳血管障害 頭痛
この記事は約 36 分で読めます。 180 Views

日本人の死因1位として知られるがん
がんはどの場所にできても怖いものですが、なんといっても脳はこわい場所です。
なぜなら、他の臓器と同じように丸ごと切除するということができないからです。
そのため、早期発見が特に重要となるがんといえるでしょう。
ここでは、脳腫瘍の基礎知識を中心に、生存率や治療などについてご紹介していきます。

脳腫瘍とは…

脳は、生命の維持のために重要であることはもちろん、心の面でも記憶や感情のコントロールなどをつかさどるなど、きわめて大切なところです。

脳腫瘍とは、その脳や脳をとりまく組織にできる腫瘍の総称で、複数のタイプがあります。
脳腫瘍の患者数は10万人あたり10人程度と推測されており、乳幼児から高齢者まであらゆる世代にみられるのが特徴です。

脳腫瘍は原発性脳腫瘍転移性脳腫瘍にわけられます。

原発性脳腫瘍は脳のなかの組織や胎生期の遺残組織から発生します。
遺残組織とは…発生過程においてほんらい退化すべき組織が、退化せずに残るか、あるいは形成期の状態に留まっている組織のこと。

転移性脳腫瘍は他の臓器の悪性新生物(がん)が脳に転移して発生します。

脳腫瘍全体のうち、原発性脳腫瘍が約8割をしめます。

脳腫瘍になりやすい人の特徴

下記の項目に当てはまる人は、脳腫瘍の初期症状になる可能性が他の人よりも高いので注意が必要です。
• たばこを長期間吸っている
• 食事は肉や脂質が多く野菜をあまり食べない
• ストレスを感じている
• 血縁者に脳腫瘍を発症した人がいる
• 携帯電話でよく長電話をする人(電波がよくありません)

脳腫瘍の種類

脳腫瘍の分類にはWHOによる組織型分類がもちいられます。
原発性脳腫瘍の発生頻度は、
髄膜腫(ずいまくしゅ)

神経膠腫(しんけいこうしゅ)

下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)

神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
の順におおく、この4つだけで約8割をしめています。

原発性脳腫瘍は、脳実質内にできるものと脳実質外にできるものにわけられます。

脳実質内腫瘍

脳そのものから発生する腫瘍です。
おもに悪性であり、浸潤性(しんじゅんせい)で、急速に進行します。
しかも再発しやすいといわれています。

浸潤性しんじゅんせい)とは?
浸潤性(しんじゅんせい)とは腫瘍の成長の仕方のひとつで、周囲の正常組織に分け入って、正常細胞を腫瘍細胞におきかえていくように成長することをいうます。

腫瘍と非腫瘍の境界がはっきりしないなので、腫瘍を全摘出しようとすると、同時に正常な細胞組織も摘出しなければならないのです。
言い換えれば、腫瘍の全摘出が極めて困難ということです。
例)
砂山に染みこんでいく水(水を腫瘍とおきかえて)を思い浮かべて下さい。
水(腫瘍)はどんどん砂山に染みこんでいきます。

砂山に染みこんでしまったので水だけを取り除くのは困難となります。

無理に取り除こうとすると砂山がくずれてしまいます。
このように、脳に染みこむようにできた腫瘍を取り除こうとすると、脳機能に障害を与える可能性が
あるのです。

(脳実質内腫瘍の種類)
①神経膠腫(しんけいこうしゅ)
悪性脳腫瘍の代表的なものに、グリオーマと呼ばれる神経膠腫(しんけいこうしゅ)があります。
これは、膠細胞が腫瘍化したものです。

神経膠腫は、年間約1万人が発症します。腫瘍が脳の中に染み込むように広がるため治療が難しいと
されています。
神経膠腫は脳腫瘍のうち約24%を占めます。

②髄芽腫…1.1% きわめて悪性です。
③胚細胞腫…2.7%
④悪性リンパ腫…3.1%
⑤血管芽腫…1.7% 良性です。

神経膠腫:しんけいこうしゅ(グリオーマ)

神経膠腫(しんけいこうしゅ)は、神経膠細胞(グリア細胞)から発生するとかんがえられている腫瘍です。

神経膠細胞(グリア細胞)とは…
ニューロン(神経細胞)が正常に機能するようにさまざまな面からたすけている細胞です。

【神経膠腫(しんけいこうしゅ)の種類】
①びまん性星細胞腫
②退形成性星細胞腫(のけけいせいほしさいぼうしゅ)
③膠芽腫(こうがしゅ)
④乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)
⑤上衣腫(じょういしゅ)

①~③はアストロサイト(星状膠細胞)から発症し、悪性度の低い順から①~③とあります。
星状膠細胞系の腫瘍は、再発を繰り返しながら悪性化していく性質をもっています。
腫瘍の発生には、複数のがん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常が関わっているとかんがえられています。

びまん性星細胞腫

【好発年齢】30~40歳代に多くみられます。

【WHO グレード】 Ⅱ

【症  状】てんかん発作、麻痺、失語、頭痛、嘔吐など

【経  過】びまん性星細胞腫は浸潤性のため、腫瘍の全摘出はむずかしく、のこった腫瘍から再発や
悪性化をきたすことが多いといわれています。
浸潤性とは…
発生したところの組織層をこえてひろがり、周囲の健康な組織内にまで増殖しているがん。

てんかん発作で初発することが多い

全摘出は困難で、放射線治療の反応性も低いため腫瘍が残存しやすい

一定期間(平均4~5年)をへて再発。悪性化することが多い。

【発症部位】
びまん性星細胞腫の腫瘍は、大脳半球に約66%の割合でみられます。
おもな症状は、腫瘍が発症した部位におうじた局所症状と頭蓋内圧亢進症状があります。
<局所症状>
腫瘍がまわりの脳の組織を圧迫または損傷することでおこります。
・てんかん発作
・麻痺
・失語
<頭蓋内圧亢進症状>
腫瘍とまわりの浮腫によって脳圧が上昇することでおこります。
・頭痛
・嘔吐

びまん性星細胞腫は脳のおもてちかくでゆっくりと発育していくため、局所症状が先にでる場合が多く
なかでも、てんかん発作で発症することが多いといわれています。

大脳半球のなかでも、前頭葉がそのうちの約半数をしめます。
前頭葉側頭葉頭頂葉後頭葉の順


【治療と予後】
手術で可能なかぎり全摘出をめざします。
放射線の反応はたかくありませんが、術後も腫瘍がのこっている可能性が高いため、分割照射をおこない
悪性転化にそなえて化学療法を追加することもあります。
しかし、のこっている腫瘍からの再発や悪性転化が多く、5年生存率は68.3%といわれています。

退形成性星細胞腫(のけけいせいほしさいぼうしゅ)

びまん性星細胞腫と膠芽腫(こうがしゅ)との中間に位置します。
退形成性細胞腫(のけけいせいほしさいぼうしゅ)から膠芽腫への悪性転化がしばしばみられます。
また、びまん性星細胞腫からの退形成性細胞腫への悪性転化もみられることがあります。

びまん性星細胞腫

↓ 悪性転化

退形成性細胞腫

↓ 悪性転化

膠芽腫

【好発年齢】40~60歳代に多くみられます。

【WHO グレード】 Ⅲ

膠芽腫(こうがしゅ)

グリオブラストーマともいわれます。
原発性脳腫瘍の約9.2%、神経膠腫の37%をしめ、もっとも悪性の腫瘍で、浸潤性に急速に進行します
浸潤性とは…
発生したところの組織層をこえてひろがり、周囲の健康な組織内にまで増殖しているがん。

【好発年齢】45~70歳代に多くみられます。

【WHO グレード】 Ⅳ

【症  状】
・急速に進行する頭痛、嘔吐
・人格変化
てんかん発作、麻痺、失語など

【経  過】
膠芽腫では腫瘍のまわりに浮腫(むくみ)をともないながら、浸潤性に急速に増大するため、
数週間~週ヵ月のみじかい期間で頭蓋内圧亢進症状が進行します。
好発部位はびまん性星細胞腫とおなじで大脳半球(とくに前頭葉)です。

<発症>
初発症状…頭痛(頭蓋内圧亢進によるもの)が麻痺まどの局所症状より多い

↓ 数週間~数ヶ月

頭蓋内圧亢進症状の悪化、人格変化などもあらわれてきます。
腫瘍ができた反対側の大脳半球まで浸潤することが多い

↓ 治療

治療をおこなっても平均生存期間は12~14カ月程度です

【治療と予後】
手術で可能なかぎり全摘出をめざし、術後放射線療法と化学療法を追加します。

<放射線療法>
拡大局所照射・局所照射をおこないます。
放射線の反応は高くありませんが、術後も腫瘍がのこっている可能性が高いため、拡大局所照射をおこなった
あと局所照射をくわえます。

<化学療法>
テモゾロミド、もしくはアルキル化薬を使用します。

<予  後>
予後はきわめて悪く、平均生存期間は12~14カ月程度です。
また5年生存率は6.9%です

毛様(もうよう)細胞性星細胞腫(小児の腫瘍)

星状膠細胞(アストロサイト)から発生する腫瘍のなかでもっとも良性の腫瘍で、浸潤性が弱く悪性転化は
非常にまれな腫瘍です。
浸潤性とは…
発生したところの組織層をこえてひろがり、周囲の健康な組織内にまで増殖しているがん。

また、毛様(もうよう)細胞性星細胞腫は視神経視交叉などに腫瘍ができやすく(視神経膠腫)は、
神経線維腫症Ⅰ型の患児に多くみられます。
神経線維腫症Ⅰ型とは…
皮膚に大小さまざまな半球状の水ぶくれみたいなものができたり、カフェオーレのような色をした色素班が
できる遺伝性疾患ですが、突然発症率が50~70%と高率な疾患です。

【好発年齢】小児期~思春期に多くみられます。

【WHO グレード】 Ⅰ

【症  状】
・視力・視野障害(視神経・視交叉に腫瘍ができた場合)
・姿勢をたもつことができず、歩くと酔っぱらったようによろめく(小脳性運動失調)
・頭痛(頭蓋内圧亢進症状)

【予  後】
他の星状膠細胞腫とことなり、全摘出ができれば治癒が可能です

乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)

オリゴデンドログリア(乏突起膠細胞)由来の腫瘍とかんがえられていましたが、2007年のWHO分類から
「しばしば染色体1p/19qの欠失をともなう」(染色体の異常)という表記がされています。

乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)は、ゆるやかな進行で増大する腫瘍なので、症状の急激な出現や悪化は
少ないといわれています。
しかし、浸潤性腫瘍なので、発生したところの組織層をこえてひろがり、周囲の健康な組織内にまで増殖して
いくがんです。

原発性脳腫瘍の約1.7%、神経膠腫のうち約7.1%をしめ、悪性型が20%みられます

【好発年齢】20~50歳代に多くみられます。

【発症部位と症状】

大脳半球の脳表にできる腫瘍で、とくに前頭葉に多く発生します。
初発症状はけいれん(てんかん発作)が多く、その他、腫瘍のできた部位におうじた局所症状をあらわします。
てんかん発作、麻痺、失語など
・頭痛
・人格変化
・脳局所症状(麻痺、失語など)

【治  療】
手術で可能なかぎり全摘出をめざし、放射線療法をくわえるのが標準治療です。

<放射線療法>
術後、のこった腫瘍にたいして、分割照射をおこないます。

<化学療法>
悪性例では放射線治療にアルキル化薬を中心とした化学療法を併用します。

<保存療法>
悪性度のひくい腫瘍では経過観察とすることもあります。

【予  後】
5年生存率は78.5%です。
浸潤傾向はつよいのですが、ゆるやかに発育するため、再発したとしても数年かかります。

上衣腫(じょういしゅ)小児の腫瘍


脳室内にできやすい腫瘍です。(とくに第四脳室が多い)
脳室とは…
脳の中には脳脊髄液を満たし,互いに交通する4つの室があります。
大脳半球の左右にあるものを側脳室,間脳にあるものを第三脳室,延髄にあるものを第四脳室とよびます。

原発性脳腫瘍の約1.1%、神経膠腫の約4.6%をしめ、悪性型が約25%にみられます

【好発年齢】10歳未満の小児に多くみられます。(約40%)

【WHO グレード】 Ⅱ~Ⅲ

【症  状】
脳脊髄液がながれていく、脳室のなかにできる腫瘍なので、そのながれを阻害してしまいます。
そのため、非交通性水頭症による頭蓋内圧亢進症状をおこすことが多いといわれています。
<大脳半球の症状>
・脳の局所症状として片麻痺や失語など

<側脳室・第三脳室の症状>
・頭蓋内圧亢進症状として頭痛や嘔吐

<第四脳室の症状(全体の約60%)>
・頭蓋内圧亢進症状として頭痛
・小脳症状として、姿勢をたもつことができなくなり、歩くとき酔っぱらったみたいによろめく。

【治  療】
手術で可能なかぎり全摘出をめざし、のこった腫瘍にたいしては放射線療法として原体照射をおこないます。
化学療法の有効性は確率されていません。

【予  後】
多くはゆるやかに発育し、浸潤傾向もつよくありませんが、手術の摘出率がひくいため、再発することが多い
といわれています。
しかも、臨床的な予後はよくないといわれています。

浸潤とは…
発生したところの組織層をこえてひろがり、周囲の健康な組織内にまで増殖していくことです。

5年生存率は72.3%です

髄芽腫(ずいがしゅ)小児の腫瘍

小児の悪性脳腫瘍の代表ですが、まれに成人にも発症します。
通常、小脳虫部にできる腫瘍ですが、ときに小脳半球にもできます。
それが、脳脊髄液のながれにのって大脳や脊髄の髄腔ないにもひろがっていきます。

【好発年齢】14歳以下の男児に多くみられます。

【WHO グレード】 Ⅳ

【症  状】
腫瘍ができる小脳での局所症状と頭蓋内圧亢進症状が中心となります。
経過がはやく、進行性であるのが特徴です。
<小脳の症状>
腫瘍が小脳半球にひろがっていくことでおこります。
・体感失調(姿勢をたもつことができなくなります)
・失調性歩行(歩くとき、酔っぱらったみたいによろめきます)
・眼振(自分の意思とは関係なく眼球がうごきます)

<頭蓋内圧亢進症状>
腫瘍の圧迫による脳脊髄液の通過障害によっておこります。
・頭痛
・噴射性の嘔吐
・うっ血乳頭
視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)に強い浮腫(むくみ)がみられる状態をいいます。

【治  療】
手術では、腫瘍全摘出、あるいは亜全摘手術をおこないます。
全摘は完全に切除すること、亜全摘は、一部を残して大部分を切除することです。

<放射線療法>
手術後、早期に全脳全脊髄+後頭蓋照射をおこないます。

<化学療法>
ピンクリスチン+シスプラチン+ロムスチン(もしくはシクロホスファミド)の併用療法などが
使用されています。

※3歳未満の乳幼児では中枢神経は発達段階で、放射線による障害(発育障害や精神発達の遅れ)を
おこしやすいため、術後には化学療法を優先します。

【予  後】
悪性腫瘍で、進行がはやいため、予後は悪いといわれています
のこった腫瘍が脳脊髄液のながれにのってひろがり、再発をおこすことが多いのです。

5年生存率は50~60%です

胚細胞腫(はいさいぼうしゅ)小児の腫瘍

【胚細胞腫の分類】
胚細胞腫は6種類あります。
①ジャーミノーマ
悪性腫瘍で、胚細胞腫の69%をしめます。
<おもな発症部位>鞍上部、松果体部
<腫瘍マーカー>PLAP

鞍上部の場所は?
脳の下垂体が収まる場所をトルコ鞍といいますが、そのトルコ鞍の上の部分です。

松果体の場所は?
左右大脳半球の間にある卵形の小体で、内分泌器官の一つで、視床の上部に属しています。

②奇形腫(きけいしゅ)
奇形腫は成熟奇形腫(良性)未熟奇形腫(悪性)があり、胚細胞腫の約13%をしめます。
<おもな発症部位>松果体部

③胎児性癌
胚細胞腫の約4%をしめ、悪性腫瘍です。
<おもな発症部位>松果体部
<腫瘍マーカー>AFP

④卵黄のう腫瘍
胚細胞腫の約3%をしめ、悪性腫瘍です。
<おもな発症部位>松果体部
<腫瘍マーカー>AFP

⑤絨毛(じゅうもう)癌
胚細胞腫の約3%をしめ、悪性腫瘍です。
<おもな発症部位>松果体部
<腫瘍マーカー>HCG

⑥混合性胚細胞腫瘍
胚細胞腫の約8%をしめ、悪性腫瘍です。
<おもな発症部位>松果体部
<腫瘍マーカー>混合する腫瘍によります。

鞍上部(あんじょうぶ)胚細胞腫

胚細胞腫の約60%をしめ、男女比=1:1で性差はありません。
ジャーミノーマが90%です。
【症 状】
下垂体前葉機能障害
・GH(成長ホルモン)の低下症状として低身長、肥満となります。
・LH、FSHの低下症状として無月経、二次性微遅延(思春期のおくれ)があります。
LH、FSHとは…
脳下垂体前葉から分泌されるホルモンで、どちらも卵巣を刺激するように働くホルモンです。
視神経、視交叉の圧迫
・視力・視野障害

視床下部障害
・尿崩症(多尿となる病気)

松果体部胚細胞腫

(しょうかたいぶはいさいぼうしゅ)
胚細胞腫の約30%をしめ、男女比=90%:10%で男児に多い腫瘍です。
ジャーミノーマが60~70%、奇形腫が20~30%、その他が10%の割合です。

【症 状】
・頭痛
・嘔吐
・中枢性難聴
・Parinaud(パリノー)症候群(眼球を上下にむけられなくなるなどの症状があらわれます)
・Argyll Robertson(アーガイル ロバートソン)徴候
瞳孔が過度に拡大する(散瞳)などの目の症状がでたり、自律神経障害がでたりします。

ジャーミノーマの治療と予後

<手 術>
手術はおこなわず、化学療法をおこなった後に、放射線療法をくわえます。

<放射線療法>
低線量で全脳室の照射をおこないます。

<化学療法>
CARE療法、ICE療法、EP療法などをおこないます。

<予 後>
5年生存率は、94.6%です
ジャーミノーマは悪性腫瘍ではありますが、放射線療法、化学療法が有効なので、予後は良好です。

奇形腫の治療と予後

<手 術>
奇形腫は放射線の反応がひくいため、手術を原則として、全摘出をめざします。

<放射線療法>
のこった腫瘍にたいして局所照射をおこないます。

<化学療法>
術後の補助療法として放射線療法と併用します。

<予 後>
5年生存率は成熟奇形腫で84.6%、未熟奇形腫で67.8%です。
成熟奇形腫の場合は全摘出により治癒が可能といわれています。
しかし、未熟奇形腫は浸潤性なので、発生したところの組織層をこえてひろがり、周囲の健康な組織内に
まで増殖していくため、再発する可能性が高いのです

悪性リンパ腫

脳内に発生するリンパ性の腫瘍で、大部分が中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)でひとつ、転移性のものがあります。

悪性リンパ腫は、増加傾向にあり、発症のメカニズムは不明なのですが、つぎの3つが影響しているのでは
ないかとかんがえられています。
・免疫抑制薬の投与
・HIV(エイズ)
・EBウイルス

【好発年齢】50歳以上の男性に多くみられます。

【発症部位と症状】
悪性リンパ腫は、腫瘍の発生した部位におうじた局所症状をあらわしますが、脳室やくも膜下腔の周辺を
中心にいろいろな所に発症し、進行が非常にはやいのです。

<腫瘍が大脳半球にできた場合>
・脳局所症状として、麻痺や失語がみられます。
・精神症状として、記銘力障害(新しく物事を覚え込む能力の障害)、人格変化などがみられます。

<腫瘍が脳幹・中脳水道・大脳基底核・小脳・第四脳室にできた場合>
頭蓋内圧亢進症状として、頭痛、嘔吐、うっ血乳頭がみられます。
うっ血乳頭とは…
脳の中の圧が高くなるため、眼底検査で視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)に強い浮腫(むくみ)
がみられる状態をいいます。

【治 療】
手術はおこなわず、生検による組織診断のみをおこない、メトトレキサート(MYX)を大量に投与した後に
放射線療法、化学療法を追加します。
しかしメトトレキサート(MYX)による肝・腎機能の低下、骨髄抑制などの副作用には注意が必要となって
きます。

【予 後】
5年生存率は、24%です
予後不良な悪性腫瘍で、進行がきわめて早く、再発しやすいといわれています。

血管芽腫(けっかんがしゅ)

小脳半球にできる良性腫瘍です。
【好発年齢】20~70歳代に多くみられます。

【発症部位と症状】
ゆるやかに進行することが多く、頭蓋内圧亢進による頭痛で発症することが多いといわれています。
<頭蓋内圧亢進症状>
・頭蓋内圧亢進症状として頭痛やうっ血乳頭、嘔吐がみられます。

<小脳症状>
・運動失調…姿勢をたもてず、あるくときに酔っぱらったみたいによろめくようになります。
・めまい
・眼振…自分の意思とは関係なく眼球が動いてしまします。

<その他の症状>
腫瘍がつくりだすエリスロポエチン(赤血球の産生を促進する造血因子の一つ)による赤血球増加症
ともなうことがあります。
また、血管芽腫の20~30%にvon Hippel-Lindau(フォン ヒッペルリンドウ病)の合併症として
みられ、脊髄などにも多発性にみられることが多いといわれています。

【治 療】
<手 術>
まずは手術で腫瘍の全摘出をめざします。
全摘出できれ治癒も可能ですが、とりきれない腫瘍があれば、放射線療法をおこないます。

<放射線療法>
腫瘍の多発例や深部の腫瘍にたいして定位照射をおこないます。
腫瘍の増大をおさえることが可能になります。

<保存療法>
腫瘍が小さく無症状の場合は経過観察をします。

【予 後】
5年生存率は、92%です
良性の腫瘍で、全摘出できれば治癒も可能となり、もし、腫瘍がのこった場合、再発することも
ありますが、生命予後は良好です。

脳実質外腫瘍

脳を包む膜や脳神経、下垂体などから発生し脳を圧迫するように発育する腫瘍です。
おもに良性で、圧排性緩やかに進行します。
完治も可能な腫瘍です。

圧排性とは…
周りの組織を機械的に押しのけながら成長するのみであることをいいます。

例)
砂山におかれたボール(ボールを腫瘍とおきかえて)を思い浮かべてください。
砂山をくずさず、ボールを取り除くことも可能です。
と、いうことは、脳機能に障害をあたえずに腫瘍を取り除くことも可能ということです。

(脳実質外腫瘍の種類)
①髄膜腫(ずいまくしゅ)…27.1%  脳腫瘍のなかで一番おおいのですが、良性です。
②神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)…10.5% 良性です。
③下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)…18.2%
④頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)…3.6% 良性です。

髄膜腫(ずいまくしゅ)

髄膜腫の発症頻度は、最近では全脳腫瘍のなかでは最多となっていて、原発性脳腫瘍の約27%
しめます。

髄膜腫はくも膜の表層の細胞から発症し、硬膜をまきこみながら、周囲脳や脳神経、静脈洞などを圧迫しな
がらゆるやかに発育していきさまざまな症状をあらわします。
また、髄膜腫は、髄膜のある場所であればどこでも発症するといわれています。
【好発年齢】40~70歳代の中年女性に多くみられます。

【発症部位と症状】
あらわれる症状は、腫瘍のできた部位によって少しずつことなります。
非交通性水頭症による頭蓋内圧亢進症状がでる場合もあります。
・脳局所症状上肢の運動麻痺や失語・下肢運動障害
・精神症状
・てんかん
・視力障害・視野欠損
・嗅覚の消失など

【治 療】
<手 術>
多くは全摘出により治癒が可能です。
腫瘍の取り残しを防ぐために、極力、ひろい範囲で切除します。

<放射線療法>
手術後にのこった腫瘍や手術のリスクが高いちいさな腫瘍にもちいます。

<保存療法>
症状が出ていない場合、経過観察も考慮します。

【予 後】
5年生存率は96%です
良性腫瘍なので、予後は良好です。
摘出範囲が大きいほど、再発も少なく、予後もよいです。

神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)

聴神経鞘腫ともいい原発性脳腫瘍の約11%をしめ、その約95%が内耳神経に好発します
蝸牛神経(聴力に関係)症状の耳鳴りなどが最初の症状としてでやすいといわれています。
【好発年齢】40~60歳代に好発し、やや女性に多いといわれています。

【症 状】
・一側の高い音に対しての難聴
・耳鳴り
・Bruns眼振
脳に腫瘍ができている方を注視すると低頻度で、自分の意思とは関係なく眼球が大きく動く症状のことです。
・めまいなど

【治 療】
<手 術>
腫瘍を全摘出できれば治癒が可能ですが、聴力および顔面神経の保存に注意が必要です。

<放射線療法>
腫瘍が3㎝以下の場合、ガンマナイフなどをもちいます。

<保存療法>
内耳道にかぎられた小さな無症状の腫瘍の場合、経過観察とすることもあります。

【予 後】
5年生存率は、98%です
生命予後は良好ですが、聴力温存が問題となります。

下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)

下垂体腺腫は下垂体前葉細胞から発生する良性の腫瘍で、原発性脳腫瘍の約18%をしめ成人に多い腫瘍です。

また、下垂体腺腫は機能性非機能性にわけられます。

機能性下垂体腺腫

下垂体前葉は多くのホルモンの分泌を行っている内分泌器官で、ホルモン分泌過剰症状があらわれます。
早い時期から症状があらわれるので、直径1㎝以下(ミクロアデノーマ)で発見されることが多い腺腫です。

機能性腺腫はつくられるホルモンによってさらに分類され、それぞれ異なる疾患をひきおこします。
・GH(成長ホルモン)産生腺腫:22%
成人では、先端巨大症に、小児では下垂体性巨人症となります。

・PRL(プロラクチン)産生腺腫(プロラクチノーマ):25%
高プロラクチン血症となります。
性機能の低下や乳汁が出てくるなどの症状がでてきます。

・ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)産生:5.5%
クッシング症候群となり、満月様顔貌また高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、感染症など、さまざまな症状が
あらわれます。

・TSH(甲状腺ホルモン)産生腺腫:1.0%
甲状腺機能亢進症となります。

非機能性下垂体腺腫

腫瘍がおおきくなり、下垂体前葉の機能低下症や局所症状がでて初めて気づくため、直径1㎝以上(マクロアデノーマ)として発見されることが多いといわれています。

また、放射線治療などをすることによって、下垂体卒中をおこすことがあります。

【下垂体腺腫による局所症状】
下垂体腺腫がある程度おおきくなると、つぎのような症状があらわれます。

・視野障害・視力の低下
・頭痛
・眼筋麻痺

【治 療】
<手 術>
・経蝶形骨(ちょうけいこつ)洞手術(TSS)
腫瘍が小さく、鞍上部への進展がとぼしい場合におこないます。

<開頭術>
鞍上部への進展がいちじるしい場合におこないます。

<放射線療法>
・手術困難な場合は第一選択とし、定位照射をおこないます。
・再発腫瘍や薬物治療が困難ば場合や、術後、のこった腫瘍にもちいられます。

<薬物療法>
・PRL産生腫瘍→プロモクリプチン、カベルゴリン、オクトレオチド徐放剤(腫瘍縮小の効果あり)

・GH産生腫瘍→オクトレオチドの術前投与(腫瘍縮小の効果あり)

・その他の機能性腺腫→術後補助療法として使用するほか、手術困難な場合にも使用します。

【予 後】
5年生存率は、97.4%です
一部の機能性腺腫や大型の非機能性腺腫などをのぞいて、予後は良好です。

頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)小児の腫瘍

受精後8週以後から出産までの期間のことを胎生期といいますが、そのころの残ったもの(ラトケのう)
から発生する良性腫瘍です。
ラトケのうは、下垂体前葉などに分化し、その他は通常は退化、消失しますが、まれに残存組織がみられる
ことがあり、頭蓋咽頭腫はこの残存組織が腫瘍化したものと考えられています。
【好発年齢】~15歳代に好発します。

【症 状】
・頭痛、悪心・嘔吐、うっ血乳頭

うっ血乳頭とは…
脳圧亢進(脳の中の圧が高くなる)のため、眼底検査で視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)に強い浮腫(むくみ)がみられる状態をいいます。

・やや不規則な両耳側半盲(視野障害の一種で、耳のあるほうが見えなくなった状態です)

・視神経の萎縮

GH(成長ホルモン)分泌不全性低身長症

・性器発育不全

尿崩症(尿が多くなりすぎる病気)

・体温低下、肥満などがみられます。
また、小児では、頭蓋内圧亢進症状として水頭症などがみられます。

【治 療】
<手 術>
開頭術などがおこなわれ、全摘出できれば治癒も期待できますが、困難なことが多いといわれています。
小さい腫瘍にたいしては、経蝶形骨洞手術(TSS)もおこないます。

<放射線療法>
のこった腫瘍にたいして定位照射をもちいます。
小児におこなう場合、精神発達のおくれに注意が必要となってきます。

<その他>
下垂体、視床下部機能低下にたいしてホルモン補充療法をもちいます。

【予 後】
5年生存率は、90.4%です
良性腫瘍ではありますが、全摘出はむずかしく、再発が多いといわれています。
術後の下垂体や視床下部、視神経の機能の保持が問題となってきます。

転移性脳腫瘍

脳以外にできた悪性腫瘍が脳に転移した腫瘍です。
ほとんど血行性に転移し、血流量の多い部分に発症することが多い腫瘍です。

全脳腫瘍の約18%をしめ、そのうち約38%は多発性です。

1.肺がんからの転移 51.9%
2.乳がんからの転移 9.3%
3.直腸がんからの転移 5.4%
4.腎臓がんからの転移 5.3%

【治 療】
転移性脳腫瘍の治療は、脳以外のがん病巣の状態から予想される生存期間と腫瘍の個数・大きさなどによって
手術や放射線療法を組み合わせておこないます。

<予想される生存期間が6カ月以上>
・腫瘍数が単発~4個以下で3㎝以下→定位照射(+全脳照射)

・腫瘍数5個以上で3㎝以上→手術+全脳照射

<予想される生存期間が6カ月以内>
手術、全脳照射、保存療法などがおこなわれます。

【予 後】
予後はきわめて不良で、5年生存率は約15%です

悪性度の評価と平均生存期間

一般に、脳腫瘍における悪性度も、組織型の分類と同じくWHOによる分類法が利用されています。
この悪性度と発生部位には関連性があり、一般に脳外 の場合は比較的良性の場合が多く、逆に脳内の
場合は悪性である可能性が高い傾向にあります。
脳腫瘍は病期 (Stage) という評価ではなく(Grade)で評価します。

また、脳腫瘍全体の5年生存率は、平均して約75%です。
これはほかのがんと比べても高い数字で、生存しやすいがんといえますが、なかには非常に生存率の低い
脳腫瘍があります。

悪性度の評価はGrade I~Grade IVまであります。
【Grade I】
良性です。
・増殖していく力は低いです。
平均生存期間は健常人とおなじ程度

【Grade II】
・比較的、良性~やや悪性です。
・増殖していく力は低いのですが、悪性化することもあります。
平均生存期間は5年以上

【Grade III】
悪性です。
・増殖していく力が強く、核異型性、核分裂像などがみられます。
平均生存期間は2~3年

核異型性、核分裂像とは?
細胞は核と細胞質によってできていて、核の中には遺伝情報であるDNAが入っています。
正常な細胞では、2つに分かれて核分裂が起こり、細胞が分裂していきますので、核が異常に大きくなる
ことはありません。
しかし、がん細胞の核は正常な細胞より大きく、形が不整になり、粗大化したり不均等になるという特徴が
あり
、正常細胞の核とどれだけ異なるかによって、そのがん細胞の悪性度を判断することができます。
形の変形が強いものほど悪性度がたかくなります。

【Grade IV】
きわめて悪性です。
・増殖していく力がきわめて強く、核分裂像、壊死などが多くみられます。
平均生存期間は1年未満

脳腫瘍はその発生場所が、脳という人間の思考・人格や各臓器のコントロールをつかさどる器官で、
丈夫な頭蓋骨に囲まれたせまい場所であるという特殊な条件ですので、病理学的なものだけで判断する
のは好ましくなく、臨床的な立場で悪性度を考える必要があります。
例えば、病理学的にはGrade I=良性腫瘍であっても、頭蓋内圧亢進から脳ヘルニアを起こして致命的と
なる場合もあります。

腫瘍の発生部位、大きさ、浸潤性であるかどうか、放射線もしくは薬剤に対する反応性などを考慮する
必要性があります。

膠芽腫(こうがしゅ)の生存率

生存率は非常に低く、平均余命は『1年未満』、5年生存率は『10%』程度といわれています
また、手術が成功したとしても、再発した場合、平均余命は『6か月』とかなり短いようです。
がんはどのような臓器で発生する場合でも早期発見は重要ですが、脳腫瘍はこの膠芽腫があるため、特に
早期発見が必要ながんといえるでしょう。

年齢別の頻度と好発部位

脳腫瘍は小児期から高齢者まですべての年齢で発生します。
内訳は15歳未満が『5%』、70歳以上の高齢者が『25%』、残りの『70%』は成人です。

成 人(15歳以上)

<発生頻度>

  腫   瘍   名 発症頻度
髄膜腫(ずいまくしゅ) 28%
神経膠腫(しんけいこうしゅ) 24%
下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ) 15%
神経鞘腫(しんけいしょうしゅ) 11%
頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ) 3%
血管芽腫(けっかんがしゅ) 2%
その他 17%

<好発部位>

  腫   瘍   名  発症する場所
髄膜腫(ずいまくしゅ) 大脳鎌など
神経膠腫(しんけいこうしゅ) 大脳半球(特に前頭葉)
下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ) 下垂体
神経鞘腫(しんけいしょうしゅ) 小脳橋角部
頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ) 視床下部ー下垂体近傍

※大脳鎌の場所…脳の真ん中で、左右の大脳半球をへだてているところです。

小児(15歳未満)

<発生頻度>

  腫   瘍   名 発症頻度
神経膠腫(しんけいこうしゅ) 45%
胚細胞腫(はいさいぼうしゅ) 15%
髄芽腫(ずいがしゅ) 12%
頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ) 9%
髄膜腫(ずいまくしゅ) 2%
その他 17%

<好発部位>

  腫   瘍   名   発症する場所
胚細胞腫 松果体
髄芽腫(ずいがしゅ) 小脳虫部
頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ) 視床下部ー下垂体近傍
髄膜腫(ずいまくしゅ) 大脳鎌など

※小児(とくに2~10歳)では、小脳テント(大脳と小脳の間との間に伸び出している脳硬膜のヒダ)下に
発生する割合がたかいといわれています。

脳腫瘍の症状

脳腫瘍による症状は、腫瘍ができたことにより脳が圧迫され症状がでる「頭蓋内圧亢進症状」と腫瘍のできた部位により症状がでる「局所症状」に分けられます。

頭蓋内圧亢進症状

脳腫瘍の症状の代表的な症状は、頭痛嘔吐うっ血乳頭です。

頭蓋骨は伸縮できない閉じられた空間なので、腫瘍の増大や脳浮腫、脳脊髄液の循環障害などによって、
頭蓋内圧亢進症状をおこします。

脳腫瘍では、良性・悪性を問わず、患者の生命予後を左右する最大の要素は頭蓋内圧亢進といわれています。

(1)頭痛
初期では2割程度、進行すると7割程度の患者さんにみられます。
朝方に強く現れるという特徴があり、日に日に強くなっていきます。

(2)嘔吐
悪心(吐き気)をともわない噴射性の嘔吐があります。

(3)うっ血乳頭
脳圧亢進(脳の中の圧が高くなる)のため、眼底検査で視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)に強い浮腫
(むくみ)がみられる状態をいいます。
両眼にみられ、初めは視力低下はありませんが浮腫がながく続くと視神経の異常から視力低下をおこして
治らないことがあるので、出来るだけ早く頭蓋内疾患の治療を行なって脳圧を下げなければいけません。

(4)Cushing(クッシング)現象
血圧の上昇と徐脈がみられます。
徐脈とは、成人の安静時心拍数は一般に毎分60~75回ですが、60回未満となり脳に必要な血液をおくること
ができなくなります。

(5)外転神経麻痺
眼球の外方への運動が障害されます。
脳に腫瘍ができている方の眼が内方へむいた状態となります。

頭蓋内圧亢進症状の進行のしかた

【正 常】
頭蓋内はおもに、脳実質(脳そのもの)、脳脊髄液、血液によってしめられています。

【初 期】
局所症状がみられます。
(病態)
脳実質の容積の増加量がすくない

頭蓋内圧はほとんど上昇しない

脳の血流量もたもたれる

【進行期】
局所症状の進行
頭蓋内圧亢進症状
意識障害
(病態)
脳実質の容積の増加

頭蓋内圧の上昇

脳の血流量の低下

【進行期】
脳ヘルニアによる症状
重度の意識障害
(病態)
脳実質の容積の増加

さらに頭蓋内圧の上昇

さらに脳の血流量の低下みられ脳虚血となり致命的になります。

脳腫瘍が頭蓋内圧亢進から脳へルニアや脳虚血となり致命的になるメカニズムは、脳血管障害などとにています。
上記のような変化が数時間~数日単位でおこる→脳血管障害
数ヶ月単位でおこる→悪性脳腫瘍
数年~数十年単位でおこる→良性脳腫瘍

一方、良性腫瘍で頭蓋内圧亢進のおそれがない場合は、部分的切除や経過観察にとどめることも多いのです。

脳局所症状

腫瘍ができた部位におうじたさまざまな局所症状がみられます。
患者の3人に1人はてんかん発作(症候性てんかん)をおこします。

腫瘍が大脳半球にできた場合

てんかん発作
・失語
・感覚障害
・同名性半盲
視野が半分欠けてしまって、両眼の同じ側が見えなくなります。
・片麻痺

腫瘍が小脳にできた場合

・四肢および体感失調
姿勢をたまつことができなくなり、歩くと酔っぱらったみたいによろめくようになります

腫瘍が視床下部・下垂体・視交叉にできた場合

・視力障害
・視野障害
内分泌生障害(分泌過剰、分泌低下)
下垂体に発生した腫瘍(下垂体腺腫)はある大きさ以上になると、眼の神経の症状を出しますが、
ホルモンの症状で発見される事も多くあります。
このタイプを機能的と呼び、つぎのようなものがあります。
女性であれば月経の変化や出産と関係のない乳汁分泌を代表的な症状とするもの
これは女性の乳汁分泌を司るホルモンセンターに発生した病気の症状です

手足や顔貌の成人以降の変化や難治性の糖尿病を代表的な症状とするもの
これは成長ホルモンと呼ばれる成長期に身体を作るために必要なホルモンセンターに発生した病気の症状です

高血圧や特徴的な体格(肥満)となるステロイドホルモンと関係の深い病気
など、脳腫瘍とは思わない身体の症状を出すことが特徴です。

腫瘍が脳幹にできた場合

・構音障害
発音が正しく出来ない症状を言います。
・嚥下障害
ものが飲み込みにくくなります。
・眼球運動障害

脳腫瘍の初期症状

・起床直後のめまい・頭痛・吐き気
・慢性的な頭痛
・視界の一部が欠けている又は欠けることがある
・視力が低下することが多い
・片手や片足だけが動かしにくい
・頭の重さを感じることが多い
・耳鳴りや難聴が起きやすい
・てんかん・けいれん発作が起きる…20歳をすぎてから生じたてんかんの場合は、まず脳腫瘍をうたがいます。
・女性の場合は(時には男性も)妊娠していないのに、母乳が出る(乳汁漏出)というものがあります。
これは乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)が過剰につくられるからで、視床下部、下垂体の機能障害による
ものとされています。

診断から治療までの流れ

脳腫瘍の治療の基本は手術療法です。
腫瘍の組織の型や進行度におうじて放射線療法や化学療法を追加するのが一般的です。
場合によっては、手術のまえに放射線療法や化学療法をさきにおこないます。

1.臨床診断
・問診
・臨床診断…患者が実際にあらわしている症状
などをおこないます。

2.画像診断と臨床検査
・CT…腫瘍内出血をおこしているかがわかります。

・MRI…感度がたかく、病変の検出にもっとも有効です。

・脳血管造影(DSA,MRA,3D-CTA)…血管の分布や手術前に血管の走行を確認するためにもちいられます。

・SPRCT,PET…血流や代謝を測定することにより腫瘍の悪性度を判定します。
放射線治療後の壊死と再発腫瘍との鑑別をするのに有効です。

・血液検査

・脳脊髄液検査

・遺伝子検査

3.病理検査
・生検…病変の組織(細胞)を採取して、それを顕微鏡で調べる検査です。
脳腫瘍の確定診断には、生検による病理検査が重要となります。
生検の方法は開頭術と定位生検の2種類あります。
定位生検は脳の深部に腫瘍がある場合や、通常の開頭術では脳の損傷が大きくなってしまう場合に
もちいられます。

・摘出標本…患者さんから得られた組織や細胞を病理標本に作成し、最終的にできあがった標本を顕微鏡で
観察してどのような病気であるかを診断します。

このような流れで検査がおこなわれ良性であれば、腫瘍の発育がゆるやかであれば経過観察の場合もあります。
悪性の場合は、つぎの流れで治療がおこなわれます。

4.手術療法
腫瘍を摘出します。

5・放射線療法・化学療法がおこなわれます。

腫瘍の摘出率と生存率

良性腫瘍

脳実質(脳そのもの)以外の腫瘍は全摘出できれば治癒(ちゆ)が可能です。
良性腫瘍(神経鞘腫)の場合肉眼的腫瘍摘出率は100%です。
しかも、5年生存率もほぼ100%です。

悪性腫瘍

悪性腫瘍(脳そのものに腫瘍がある)の多くは全摘出は困難ですが、摘出率が高いほど生存率が高い傾向に
あります。

腫瘍が周囲の神経や血管をまきこんで、全摘出が困難な場合には、麻痺などの後遺症をのこさないために、
部分摘出にとどめることもあります。

悪性腫瘍(神経膠腫)の場合の腫瘍摘出率による生存率の変化を紹介します。

肉眼的腫瘍
摘出率
 1年  2年  3年  4年  5年
100% 約95% 約80% 約75% 約70% 約70%
95% 約80% 約60% 約53% 約45% 約40%
75% 約70% 約45% 約40% 約38% 約30%
50% 約62% 約40% 約38% 約32% 約28%

脳機能をまもる手術

脳機能をまもりつつ腫瘍をできるだけ摘出するために、現在はつぎのような機器や手術法がもちいられて
います。
ナビゲーションシステム
術後画像をもとにして、モニター上で腫瘍のある部位と操作部位との位置関係を確認しながら手術を
おこないます

内視鏡下手術
以前は観察が困難だった部位を直視下で確認しながら手術をおこないます。
小開頭でおこなう手術は鍵穴手術と呼ばれています。

モニタリング手術
予測される障害を防ぐために、刺激によっておこる誘発電位をモニタリングしながら手術をおこないます。
誘発電位とは、さまざまな外からの刺激によって誘発される脳の電気的な反応のことをいいます。

覚醒下手術
手術中に一時的に麻酔からさました状態で、患者とコミュニケーションをとって、言語機能や運動機能の
温存を確認しながら手術をおこないます。

放射線療法

脳腫瘍の放射線療法は大きくわけて通常照射と定位照射の2通りの方法がもちいられています。
多くの場合、正常組織の損傷をおさえるために、1回照射よりも分割照射がおこなわれています。
通常照射
腫瘍をふくむ広範囲に1~数方向から放射線をあてます。
腫瘍部分以外の予防効果はあるのですが、精密度は低くく、放射線障害が多いという弱点があります。

定位照射
腫瘍に集中して多方向から放射線をあてます。
放射線障害は少なく、精密度もたかいのですが、腫瘍部分以外の予防効果がないことが弱点です。
【定位照射の適応となる腫瘍】
・神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
・髄膜腫(ずいまくしゅ)
・下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)
・頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)
・血管芽腫(けっかんがしゅ)
・転移性脳腫瘍
※症例によって適応はかわってきます。

【放射線の感受性(反応)が高い腫瘍】
・ジャーミノーマ(胚腫)
・悪性リンパ腫
・髄芽腫(ずいがしゅ)

【放射線の感受性(反応)が低いが有効とされている腫瘍】
・星細胞腫(びまん性、退形成性)
・膠芽腫(こうがしゅ)
・転移性脳腫瘍

※今までは、X線やガンマ線が放射線治療にもちいられてきましたが、近年は炭素線などの重い粒子を
加速してもちいる重粒子線治療の研究がすすめられています。
X線やガンマ線よりも大きいエネルギーで放射線をあてることができ、正常組織にあたえる損傷が少ないので
現在の放射線治療の反応がひくい腫瘍への治療効果が期待されています。

化学療法

化学療法は手術や放射線治療の後にもちいられることが多い治療法で、腫瘍の縮小や消滅など放射線との
相乗効果が期待されている治療です。

また、血液脳関門(脳の働きに大切な神経細胞を有害物質から守るバリアー機能)を通過させるため、分子量
がちいさく、脂溶性の薬剤を使用し、複数の薬剤を併用して使われることもあります。

【経口・静脈注射】
デモゾロミド(デモダール)
<おもな適応> 膠芽腫(こうがしゅ)などの悪性度のたかい神経膠腫(しんけいこうしゅ)
<副 作 用> ニューモシスチス肺炎

2006年に認可されたデモゾロミドは血液脳関門(脳の働きに大切な神経細胞を有害物質から守るバリアー
機能)を通過しやすく、放射線療法を併用した場合の相乗効果がみとめられています。
おもに、点滴静脈で使用されてきた従来の薬剤とちがい、経口投与(飲み薬)でおこないます。
2010年から静脈注射も可能になっています。

【静脈注射】
ACNU
<おもな適応> 膠芽腫(こうがしゅ)や乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)
<副 作 用> 間質性肺炎

イホスファミド
<おもな適応> 膠芽腫(こうがしゅ)や胚細胞腫(はいさいぼうしゅ)
<副 作 用> 出血性膀胱炎

シスプラチン、カルボプラチン
<おもな適応> 膠芽腫(こうがしゅ)や胚細胞腫(はいさいぼうしゅ)、髄芽腫(ずいがしゅ)
<副 作 用> 腎障害、難聴

エトポシド
<おもな適応> 髄芽腫(ずいがしゅ)や胚細胞腫(はいさいぼうしゅ)
<副 作 用> 間質性肺炎

ピンクリスチン
<おもな適応> 髄芽腫(ずいがしゅ)
<副 作 用> 末梢神経障害

メトトレキサート
<おもな適応> 悪性リンパ腫
<副 作 用> 肝・腎障害

すべてに共通してみられる副作用として、骨髄抑制があります
骨髄抑制とは…
骨髄の働きが低下している状態で、赤血球、白血球、および血小板の数が減少する状態のことです。

治療後の生活

手術や放射線による治療がひと段落した後も、しばらくは定期的に通院し、経過をみなければなりません。
定期検診では、画像検査や血液検査が行なわれます。

以上、脳腫瘍について基本的なことをご説明しましたが、「身体の調子が悪い」、「おかしいな」と
思ったら、早めに病院で検査をしてもらうことが大切です。
早期発見できれば、それだけ治療もしやすくなります。

また、脳腫瘍は適確な予防法がありません。しかし、腫瘍の進行を助長するような行動を改めるなど、脳に
とっても健康的な生活習慣を心がけて、脳を労わるようにしてみましょう。

脳 の た め に よい生活習慣
1.  食 生 活 の 改 善 :健 康 は 「 食 」 か ら !
2.喫 煙
3. ス ト レ ス を 溜 め 込 ま な い
4.趣 味 や ス ポ ー ツ な と で リ フ レ ッ シ ュしましょう !

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hamamoto

医学の大好きなHAMAMOTOです。
病気や健康について、皆さまに分かりやすく紹介していきたいと頑張っています!(^^)!
現在、鍼灸治療院を経営し、皆さまの健康にたずさわっています。
平成13年に整体師として治療院をしつつ、平成16年にアロマコーディネーターの
資格を取得しました。
鍼灸治療院を開業したのは、2016年5月ではございますが、患者さまの治療と
皆さまへの健康にかんする情報発信に頑張っていきたいと思っています!
鍼師免許 第171865号
灸師免許 第171571号
ウェブサイトURL:http://health-life.tokyo/
メールアドレス:koume3086@gmail.com

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